死があなたを
人から与えられる快楽は麻薬に例えられる
メタンフェタミンやクラックの安っぽい快楽は
通り過ぎていく人々のように
あなたの気を逸らせて
あなたを人に注目させる
メタンフェタミンやクラックの安っぽい快楽は
寝入りばなの快楽に勝ることはない
しかしそれは大衆の冷笑を受ける
なぜなら易々与えられるものではないからだ
ただ眠るその味わいは
この世で最も甘美なその味わいは
穴を塞ぐ代わりに置かれた油絵や
走り屋たちの峠にあり
嗜みないものには味わうことはおろか
扱うことさえ叶わない
もし傲慢にもその身を抱こうとすれば
蜘蛛の脚のような細い指で
ゆっくりと絞め殺される
人から与えられる快楽は麻薬に例えられる
陰鬱で飾り気もない寝入りばなの快楽は
全てを委ねる儀式を必要とする
人から与えられる快楽は麻薬に例えられるが
人から人へ渡るものはもっと緊密で
夥しく存在する人間たちのなか
ただ一人あなただけが迎え入れられる
あなたにはその器があった
あなたにはその味覚があった
あなたの身は蛞蝓のように溶け交わる
その境界の消失は
人が現世から消え去る眠りの永遠
生を受けたあなたに
唯一あなたに捧げられる
生きなかったものたちが求めてやまなかった生は
当たり前に与えられたあなたには下らないことだろう
そしてその対として存在する死もまた
あなたには退屈なものだろう
あなたはいま変わりゆく景色を愉しんでいる
あなたの齢がそうさせるのだろう
あなたの若さが激しさを求める
あなたの活発な肉体と精神は激しく燃えることを望んでいる
しかし死はあなたの影として添い続ける
例えあなたが人々の享楽に身を映しても
メタンフェタミンやクラックの安っぽい快楽は
あの安っぽい愛は
若いあなたの血肉を容易に燃やしてしまうだろう
ああ確かにそれにさえ嗜みは必要だ
人々が鼻白むあの安っぽい快楽でさえも
享受できる者はまた少ない
なぜならその味は
墨が入るのに傷を彫らねばならないように
若くやわらかい肉に咲いた無数の痛みがなければ
滑り落ちてしまうだけのものだから
若い動物の跳躍
その瞳から零れる鮮やかな血のかがやき
綺羅びやかで華やかであっけない
痛みと喜びの鉄臭い味は
例えばあなたの死のような
老いた硬い樹皮には味わえないだろう
あなたの影も若い頃は知っていた筈なのに
だからこそ眉を顰めるのか
日々や周囲はあなたを夢に連れていく
消えゆく美しい夢
枯れ落ちる花などないかのように
永遠に咲き続ける花園
朽ちたものたちの地上に咲く
あの重苦しい影が添っているのが見える
その影は美しい
静謐で重厚で変わることのない死
焦げ溶け崩れていくあなたは対照的だ
しかし私はあなたを見つめている
醜いあなたは美しい
生も死もない存在が
恣にできる私達を放っておかれるのは
鮮烈なあなたのかがやきのため
静謐なあなたの影のため
影は愚鈍にあなたに沿う
豪奢な花々には見えもせず
望む私にも成し得ない
朽ちゆくあなたを、すべてのみこんで
死があなたを組み敷く
甘美だった唇に触れようとして
