まっしろな手紙老人とりんご

まっしろな手紙

白い髪をした老人は、ポストを覗き込み、手紙を取り出しました。
クリーム色のダイヤ貼りの封筒は、柄のない赤い封蝋があるばかりで、宛名も何も書かれていませんでした。

庭に戻る道を歩いていた老人は、枇杷の木の前で立ち止まりました。
老人が枇杷の葉を見つめていると、葉っぱから虫が一匹飛び立ちました。
虫は老人の頭をぶうんと一周して、どこかへと飛び去りました。
老人は庭の椅子に座って手紙を開けました。
手紙はまっしろの三枚の紙で、何も書かれていませんでした。
老人はその手紙をじっといつまでも読んでいるのでした。

老人が手紙を読んでいると、後ろから抱きしめられました。
振り向くとそこには、おおきなりんごがいました。
その腕はうすいクリーム色で、柔らかく、ぬるかったのでした。

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