どうしてくれる
「りーおー氏ーーー」
りおは顔面を両手で覆っていた。目の前にピンクのツインテールをぶら下げたおっさんがいるからである。
「こんなんなってしまったぞ。どうしてくれる」
「こっちのせり……えふんえふん」
りおは咳込んで、目が覗いた。視線はあちらこちらへと落ち着きがない。美樹は彼に詰め寄った。
「りお氏」
「近い」
「なんだ、あれは」
「あれって」
「配達人だ。眼鏡の」
「タナカさん?」
「そうだ。あれはなんだ」
「うちのお客さんで」
「なぜ客を客の家に寄越すのだ」
「あ、その」
りおはたじろぎながら説明を続けた。
「実はシノブさんが配達に行けなくなっちゃって」
「うむ」
「電話をしたんだけど、美樹さん、出なくて。そしたらタナカさんが行ってくれるって。ライセンスもあって」
「タナカさんが来ると電話はしてくれたか?」
「しなかった」
「いきなり知らない人間に来られても困る」
「すみません」
「……それだけか」
「俺、まだ何か」
美樹は自らの桃色に艶めく頭髪を指さした。
「心当たりは」
「え?」
「生殖キャンペーンの」
「なんですかそれ」
「拡張日本の生殖促進活動だ。馬鹿らしい広報活動をしている」
「……」
美樹の表情は固まった。
「関係ないのか」
「ええと、そもそも何の話……」
美樹の顔からみるみる血の気が引いていった。
「引き受けてしまった」
「は?」
「うっ」
美樹は踵を返し走り出し、店から飛び出した。
「え? 美樹さん? 美樹さーん!?」
りおは後を追ったが、美樹はあっという間に消え去ってしまっていた。
彼は店の前で立ち尽くした。
「どうしたんだろ」
りおは店に入って扉を閉め、両手で顔を覆って溜息をついた。
「はーーー」
